1%のキセキ
診察はそれで終わり、病院を後にした。
あんな凛々しくなっちゃって……。
病院からの帰り道、そうちゃんとの思い出を振り返る。
昔のそうちゃんは泣き虫で、虫や爬虫類が大の苦手だった。
そんなそうちゃんをからかって、幼少時代はカエルをプレゼントしたり、図鑑の爬虫類のページを開いて追いかけまわしたこともあった。
昔からおてんばだった私に、いつも泣かされるそうちゃん。
周りからはきっとそう思われていたと思う。
だけどそんなそうちゃんも、小学校中学年になってくると学級委員長やクラスをまとめるしっかり者として認識されていった。
そして、小学校高学年にもなるとそうちゃんの背は私を抜かして、どんどん大きくなっていった。
そして、中学に入ったらどんどん格好良くなって、やがて手の届かないところに……。
……私は小さい頃からそうちゃんがずっと好きだった。
幼稚園の時も、小学校の時も。
だけど、小学校でクラスのまとめ役をやるようになっていった頃から、そうちゃんがどんどん遠くなっていくのを感じていた。
幼いながらも、そうちゃんは好きになっちゃいけない人なんだって、自分とは釣り合わないって、そんな風に考えてしまう自分がいた。
そうちゃんばかりを想っていてはいけないと、色恋沙汰に目がないマセガキだった私は色んな人に目を向けるよう努力した。その結果そうちゃんがドン引きする位、恋多き乙女へと成長していったのだった。
中学に上がると、更に私を置き去りにするように成長していくそうちゃん。
周りの女子からも分かりやすくキャーキャー言われ始め、すでにそうちゃんは私の手の届かないところにいた。
そして、そうちゃんの話を女の子達から聞く度に、遠い存在であることを思い知らされるようで辛くてしょうがなかった。
今まで一番近くにいたのに……。
少し年齢を重ねただけで、こんなに遠い存在になってしまうなんて。
そして、焦るようにして作った初めての彼氏。
そうちゃんに協力してもらって付き合うことになった、野球部のこうちゃん。
そうちゃんは知らないけど、私はこうちゃんを傷つけるだけ傷つけて結局別れることになった。
今でもこうちゃんの最後の言葉が忘れられない。
「俺は宗佑のかわりじゃない」
私は、こうちゃんに初体験を迫られた時どうしてもすることができなかった。
彼のことはちゃんと好きだった。
だけど心の奥隅で想うのはいつだって、そうちゃんだった……。
結局、その想いも、そうちゃんからの裏切りで変わっていってしまうことになるのだけれど。
そしてやがて、そうちゃんにも年上の彼女ができたとうわさで聞いた。
もう、そうちゃんとは気安く呼べなくなったのだった。