1%のキセキ
『わぁーっ』
その感嘆詞の語尾にはハートマークがつきそうだ。目をきらきらさせながら、チョコの山に飛びついていく。
『今年もまた、豪勢だね〜』
すると目の前のチョコ達に向けて、両手を胸前に合わせ頭を下げた。
『なむなむ……』
『……何、拝んでんだよ』
『だってどれも本気過ぎて女子の怨念がこもってそうだから』
『なるほど』
『あ、まさか彼女からのチョコ一緒になってないよね?』
『あぁ、それは大丈夫』
『しっかし、皆彼女いるって知っててもこれだけ送ってくるんだからすごいよね。うわっ、これなんかすごい本格的っ』
見て見てそうちゃん、と袋を広げて見せる未結。それは、まるで買ってきたかのようなガトーショコラ。
しかし、すぐにバニラエッセンスの甘い香りが鼻をついて顔をそらした。
そんな俺の横で、ウキウキしながら物色していく未結。
……あぁ、その唇でしたのか。
康介からあの告白を聞いてからというものの、いつ体の関係を持つようになるのか気が気じゃなかった。
『……そういうば、康介とキスしたんだってな』
俺の発言に今までの和やかな空気が一瞬にして変わった。
途端に動揺しだす未結、顔はゆでダコのように赤くなっている。
『……え?い、いきなりどうしたの?』
『いや、この前康介から聞いてさ』
『うわ、もう本当口軽いんだから、あいつ……っ』
『……で、もう最後までやったの?』
そう聞くと、未結は恥ずかしいのか目も合わせずに口ごもりながら答えた。
『そ、そうちゃんには関係ないでしょ?』
『へー、否定しないってことはもうやったんだな』
そう言って面白い位に真っ赤になっていく未結の顔を見つめる。
からかうような笑顔を取り繕いながらも、心は荒んでいた。
俺の方がずっと前から未結を想っていたのに。
こんなにも簡単に全て奪われてしまうなんて……。