1%のキセキ
<side 栞>
医局前で彼を待ってると、彼からもう会えないとはっきり言われた。
私を無駄に傷つかせないように、彼なりの優しさなのか淡々と告げられた。
『別に付き合ってた訳じゃないから、気にしないで』
そう全然気にしてない、かっこつけて強がる私。
そんな素振りに気付かない鈍感な想い人。
……残酷だな。
きっと、未結ちゃんが私と同じことをしたら彼はきっと見抜くはず。
察してしまう。
彼は、未結ちゃんに比べてそこまで私に関心がなかったことを。
彼なりの優しさを無駄にしちゃいけない、踏ん切りつけてさっさと忘れなきゃ。
……忘れなきゃ。
ふと目頭に熱いものを感じて咄嗟に下唇を噛み締めて耐える。
……今日はもう直帰できる、さっさと帰ろう。きっと今すごく情けない顔してる。
「あれ、もう帰るとこ?」
「……っ!」
顔をあげるとそこには私の大嫌いなあの男。
なんでこんな時会っちゃうんだろう。