1%のキセキ


予想だにしない事態に、慌ててそうちゃんに帰ってと懇願する。


「お願い帰って!なんで……っ、もうそうちゃん関係ないじゃない。ただの幼馴染じゃないっ」

そう昔私に言ったのは、そうちゃんじゃん……!。
昔のことをふと思い出し、視界が涙で滲む。


「俺にとって、みゆはただの幼馴染じゃないよ」

喚く私とは対照的に冷静なそうちゃん、私はもう惑わされたくなくて耳を塞いだ。

「……やめて、そういうこと言わないでっ。もう迷わないって決めたんだから」

「俺はお前のことずっと好きだった」

「やめてっ、聞きたくないっ」

耳を塞ぐ両手を取られて、私を射るような鋭い目つきでじっと見つめられる。

「ずっと好きだった、もう誰かに譲るつもりもない。俺ももう退かないって決めたんだ」

「そんな言葉信じられない……っ」

「なぁ、未結。本当に相手を想うなら殴るなんてことできないはずだ」

諭されるようにそう言われ、額にできた真新しい傷がちくりと痛んだ。


彼にこんな現場を見られる訳にはいかない、その一心でそうちゃんを何とか帰らせようとしていたのに。

そんな奮闘もむなしく、リビングの扉が開いた。
鍵を開けインターフォンもなく入って来れるのは、家主である彼だけ。

案の定、そこには私達を疑うような目で見つめる彼の姿が。


「……何してるんだ?」

声こそ冷静を保っているものの、怒っているのが分かる。
そうちゃんは全く物怖じせず、私の両手を離すと彼を見据えこう言った。


「抜針にこなかったから様子を見に来たんだよ」

「両手をとって?」

嫌味っぽく微笑む彼。

「抜針ならご心配なく、他でやってもらいましたから」

「……お願い、そうちゃん帰って」

小声でそうちゃんにそう言う。だけど、そうちゃんはまだ帰ろうとはしない。




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