1%のキセキ
「みゆ、今日ご飯何?」
「な、鍋にしたの……っ。もう、できてるから」
「いいね、夕食にしよう」
「ちょっと待ってて、今温め直すから」
彼に促されるまま、慌てて鍋に火をつける。
まるでそうちゃんの存在を無視するかのように、テーブルの椅子に座る彼。
鍋つかみを着けた両手で熱い鍋をゆっくりリビングへ運ぶ。
「いつまでここにいるつもりですか、帰ってください。あなたが心配しなくても俺達は大丈夫ですから」
「俺はお前を信用できない。みゆの頭の額にまた痣ができていた。どうせまた殴ったんだろう?」
思わず、はっとする。
化粧をしているからバレていないと思っていたのに。
そんなんじゃ、そうちゃんの目は誤魔化せなかった。
「……そうだと言ったら?」
「何開き直ってんだよ」
「元はといえばな、全部お前のせいなんだよ」
そう言ってそうちゃんに掴みかかる彼。
冷静を失いつつある彼に、そうちゃんは至って口調を変えずに続ける。
「……俺は昔、あんたみたいに一度だけ未結を傷つけたことがある」
「だから何だよ……っ」
「だからっ、だから、もうあいつを悲しませたくないんだよ。あんな傷ついた姿見てられないんだよ」
「……っ」
「どうしても未結から離れないってんなら、何が何でも奪ってやる」
彼の胸倉を掴み返すように、ぐいっと引き寄せ睨みつけた。
「お前に未結は渡せない」
強い意志に、揺るがない真摯な瞳。
狼狽えたのは私だけじゃなかった、私以上に動揺した彼は、眉間に皺を寄せるとそうちゃんに食って掛かった。