私と彼の恋愛理論
彼女と出会ったのは、三年前の春。
彼女が勤める図書館だった。
仕事の資料でどうしても読みたい専門書があった俺は、何とか経費で購入できないか掛け合っていた。
でも、数万円もする専門書なんて簡単に購入の許可が降りるわけでもなく。
ネットで蔵書検索した経理担当者から、近くの図書館にあったから借りてこいと言われたのだった。
渋々、仕事の合間に車を走らせて図書館に行った。
なかなか目当ての本の場所が分からなくて、イライラした俺は、カウンターの中にいた職員に声を掛けた。
「この本が見つからないんですけど。」
蔵書検索の結果が印字された紙を差し出して聞いた。
「はい、ちょっと拝見しますね。」
少し無愛想に聞いた俺に対して、彼女は笑顔で対応してくれた。
彼女と一緒に建築関係の書架を探しても、なかなか目当ての本は見あたらなかった。
苛立って、少し心ない言葉を口にしてしまう。
それでも、彼女はひたすら本を探し続けた。
結局その日、本は見つからず、彼女が探して見つかり次第連絡してくれることになった。
連絡先を書いて、どうせ見つからないんだろと言う俺に、彼女は笑って言った。
「いえ、きっと見つかります。本も必要とする人に読まれたいと思ってるに違いないので。呼べばひょっこり出てきますよ。」
一瞬、あまりのメルヘン発言にどう反応したらいいか困った。
でも、彼女は至って真剣な顔をしている。
「あ、信じてませんね?私こういう迷子本探すの得意なんですよ。」
見ててください、と宣戦布告する彼女の顔が今でも忘れられない。
たぶん、俺はこの瞬間、恋に落ちたのだ。
根拠のない自信を、堂々と言い切る潔さ。
俺が嫌みを言っても、笑って受け流す。
いつも、理屈や正論を並べてて、自分の行動にすら常に言い訳ばかりしている俺には、彼女の姿があまりにも新鮮だったのかも知れない。
彼女が勤める図書館だった。
仕事の資料でどうしても読みたい専門書があった俺は、何とか経費で購入できないか掛け合っていた。
でも、数万円もする専門書なんて簡単に購入の許可が降りるわけでもなく。
ネットで蔵書検索した経理担当者から、近くの図書館にあったから借りてこいと言われたのだった。
渋々、仕事の合間に車を走らせて図書館に行った。
なかなか目当ての本の場所が分からなくて、イライラした俺は、カウンターの中にいた職員に声を掛けた。
「この本が見つからないんですけど。」
蔵書検索の結果が印字された紙を差し出して聞いた。
「はい、ちょっと拝見しますね。」
少し無愛想に聞いた俺に対して、彼女は笑顔で対応してくれた。
彼女と一緒に建築関係の書架を探しても、なかなか目当ての本は見あたらなかった。
苛立って、少し心ない言葉を口にしてしまう。
それでも、彼女はひたすら本を探し続けた。
結局その日、本は見つからず、彼女が探して見つかり次第連絡してくれることになった。
連絡先を書いて、どうせ見つからないんだろと言う俺に、彼女は笑って言った。
「いえ、きっと見つかります。本も必要とする人に読まれたいと思ってるに違いないので。呼べばひょっこり出てきますよ。」
一瞬、あまりのメルヘン発言にどう反応したらいいか困った。
でも、彼女は至って真剣な顔をしている。
「あ、信じてませんね?私こういう迷子本探すの得意なんですよ。」
見ててください、と宣戦布告する彼女の顔が今でも忘れられない。
たぶん、俺はこの瞬間、恋に落ちたのだ。
根拠のない自信を、堂々と言い切る潔さ。
俺が嫌みを言っても、笑って受け流す。
いつも、理屈や正論を並べてて、自分の行動にすら常に言い訳ばかりしている俺には、彼女の姿があまりにも新鮮だったのかも知れない。