私と彼の恋愛理論
それは、恋とか愛とか言うよりも、もっと打算的な意味合いを持った好意だった。
でも、僕も彼女もいい年をした大人だったし、そんな風に始まる関係も悪くないと思っていた。
なにしろ、この国には「お見合い」という非常に打算的な出会いの方法が確立されているのだ。
合コンだって似たようなものだろう。
胸の高鳴ったかどうかではなくて、条件を重視する。
30も過ぎて、そろそろ僕は家庭を持って落ち着くのも悪くないと思っていた。
それに、もうきっと、前みたいに僕は人を愛せない。
彼女にも恋人がいた。
「時々、どうして彼なんだろうと思うことがあるんです。」
だけど、会って話をするうちに、彼女は恋人とのことで悩んでいるようだと分かった。
どうやら、恋人の彼は僕とは正反対の性格らしい。
非常に合理的な考えをする人のようで、僕なんかが彼に会ったら、「16世紀の英文学について研究することが一体何か役に立つのか」と数時間は問いつめられそうだ。
「実は、しばらく連絡を取っていなくて。」
彼との仲がうまくいっていないことを聞いた僕は、チャンスが来たとばかりに、心の中で小さくガッツポーズした。