私と彼の恋愛理論
私は、今まで年上の男性としか恋愛をしたことがない。

しかも、年齢のストライクゾーンはやや高め。

半年前に別れた恋人も七歳年上だった。

自分で言うのもおかしいが、私は年上男にモテる。

性格は落ちついているが、やはり年相応の若さも持ち合わせているので、若い子と付き合いたいけど、四六時中付き合うのは疲れるなどという年上男のわがままに、ちょうどフィットしているのだろう。

私も惹かれるのは年上の余裕のある男性で。

年下男の気まぐれに付き合う気なんてこれっぽっちもなかった。


「もったいない。この前ちらっと見かけたけど、かっこよかったのに。」

まどかは食べ終えた弁当箱を片づけながら、つぶやく。

おそらく、この親友は、朝コーヒーショップで私と並んでいる姿を見かけたことがあるのだろう。

「そっちもね。早く連絡しなさいよ。」

私も負けじと返す。

私から見れば、この二人の方がもったいない。

これが、人の芝生は青く見えるというものか。

その日のランチは、お互いの盛大なため息と同時にお開きになった。



それから、三日後のことだった。

私は、いつもと違う時間にいつものコーヒーショップに居た。

午後七時。

繁華街ではなく官庁街のため、あまり遅くまで営業している訳ではない。

閉店間際の店内、いつもの窓際の席で私はカップを手に外を眺めていた。

真っ黒な喪服に身を包んで。
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