私と彼の恋愛理論

かつての上司が亡くなったと連絡を受けたのは、まどかとランチを共にした翌日の夕方のことだった。

二年前に定年退職したベテラン司書で、私とまどかがまるで母親のように慕っていた女性だった。

退職してからも、仲良く三人でランチに行っていたりしたが、ここ半年は連絡がなかった。

膵臓ガン、余命宣告を受けてから三ヶ月だったそうだ。

私もまどかも、今日は休暇をもらって葬儀に参列した。

号泣するまどかの横で、私はなんとか涙を我慢したけれど、気持ちは思いっきり沈んでいた。

大切な人を失うことは、思っているよりダメージが大きすぎる。

しかも、たとえそれが本人の希望であったとしても、何の予告もなくやってきた別れが、私を完全に打ちのめしていた。

まどかと別れ、ふらふらと歩いてこの店までやって来た。

ただ何となく、自分を落ち着けたくて。


「里沙ちゃん?」

気が付けば、すぐ後ろに俊介が立っていた。

彼は私の服装と表情を見て、すぐに何かを察したのだろう。

優しく呟いた。

「今から、飲みに行こうか。」
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