私と彼の恋愛理論
この建設中の建物はホテルで、吉川の会社が請け負っている物件のようだ。

急遽、現場で指示を出さないといけないことがあって、と彼は説明した。

「よかったら、近くまで送っていきますよ。彼氏も一緒にどうぞ。今日はたまたま自分の車だから。」

車のキーを取り出して、近くの駐車場を指さした。

私が戸惑っていると、隣の俊介がにこやかに返事をした。

「じゃあ、お言葉に甘えて。」

手をつないだまま歩き出す。

「ちょっと…」

抵抗しようとした私の言葉を再び俊介が遮る。

「お話があるようですから、僕は後ろで。ヘッドホンをしてますから、ゆっくりどうぞ。」

そう言って、携帯にヘッドホンをつなぎ始めた。

「お気遣い、ありがとう。」

そう言って、吉川さんも運転席に乗り込んでしまったため、私も仕方なく助手席へと座る。

少し前までまどかの指定席であっただろう席に座るのは、少しだけ戸惑いがあった。
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