私と彼の恋愛理論
やっと泣きやんだ私は、部屋中くまなく見て回った。

「ねえ、ひょっとして、家具も全部尚樹が選んだの?」

部屋に置いてあるインテリアは全部完璧にコーディネートされていて、私は密かに感心していた。

「あー、これ。予算だけ伝えて、知り合いの家具屋に丸投げした。」

「へ?」

「俺、忙しかったし、時間なかったから。コーディネーターが提案してきたのを丸ごと買った。」

どうりで。プロの仕事なら、納得だ。
さすが。ミスター合理主義。

寝室を覗くと、ダブルベッドが鎮座していた。

「これも、コーディネーター?」

「いや、ベッドだけは俺が選んだ。大きさとか寝心地とか好みがあるだろ。」

一つのベッドで眠ることを選択した彼が急に可愛く思えた。

「試してみていい?」

私はそのままベッドにダイブした。

寝心地は最高だった。

彼は満足そうな顔でベッドの端に腰掛けた。

「このベッドが曲者だった。」

「ん?なんで?すごく寝心地いいよ。」

「想像してみろよ。この広いベッドに一人で寝る寂しさを。」

彼はそのまま仰向けにごろんと寝転がり、私の方を向いて言った。

「寝心地も最高のはずなのに、全然眠れなかった。狭くて安物のお前のベッドの方がぐっすり眠れるなんて、絶対おかしいだろ。」

「すっごくいい抱き枕付きだからじゃない?」

そうおどけて見せた私に覆い被さって優しく触れるだけのキスをする。

「あれは、どこにも売ってないからな。」

彼はそう言って、もう一度唇を落とした。
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