私と彼の恋愛理論
その一言に、僕は驚きすぎて口をぽかーんと開けて固まってしまった。
あの、お父さんの口から「愛」なんて言葉が出るなんて信じられなかった。
非科学的なものは信じないし、直感なんて存在しないと言い切るお父さんが、まさか。
「どうした、変な奴だな。そうそう、ついでに言っておくけど、この先どんなに興味があっても好きな女以外とはセックスするなよ。あと、大人になって結婚するまでは確実に避妊しろ。」
お父さんはそれだけ言うと、「わかったな」と柔らかく笑った。
それは今まで見たこともないような優しい笑顔で、俺はお母さんがお父さんと結婚した理由が何となく分かった。
そう、「何となく」。
僕はやはりお母さんの子供でもあるのだ。
「まどか、戻ってこないな。ったく、めんどくせえな。」
そう言って、お父さんは寝室へお母さんを迎えに行った。
数分後、寝室から出てきたお母さんはいつもの笑顔で、「友樹、ごめんね」と謝ってくれた。
その横でお父さんはすごく満足そうな顔をしていた。
子供の僕にはまだよく分からないけど、ものすごくうちの両親は仲がいいみたいだ。
だから、僕もこの二人と一緒に笑顔できょうだいを迎えようと思う。
僕は今日も合理的に、そして直感を信じて生きている。
【end】