私と彼の恋愛理論
二人そろって露天風呂から上がってから、強引に彼女をベッドに連れて行って押し倒した。
湿っぽい話でしんみりした空気を振り払いたくて、夢中でキスをしていたら、すっかり余裕がなくなっていた。
俺の人生史上最速でゴムを装着して、すぐに彼女を奥まで突き上げる。
「えっ…もっと、ゆっくり…んっ」
「激しいのは、イヤ?」
「だめ、ほんとにちょっと待って…」
俺はわざと動きを止めて、彼女を見下ろしながら反応を待つ。
「この前はすごく気持ちよさそうだったけど?」
意地悪を言うと、彼女は早くもため息混じりだ。
「お試しとか言って、全部思った通りにしちゃうのね。」
性急に求められるのはお気に召さない(と思いこんでいる)彼女に、お試しの名の下に色々わがままを言っているのは確かで。
「女の人ってね、試食するとかなりの確率で、その商品買っちゃうんだって。昔、仕事の研修で習った。」
思い切って開き直ってみる。
「…ずるい。」
「知らなかった?俺がずるい男だって。」
「知ったときには、遅かったの。」
ふと、彼女が照れくさそうに視線を外した。
「もう、引き返せないくらい好きになってて。」
ああ、だめだ。
可愛いすぎる。
たまには彼女の言う通り、ゆっくり楽しむのもいいかなと思っていた俺はすっかりどこかへ行ってしまう。
「あっ、やっ…」
気づけば、俺は止めていた動きを再開していて。押さえきれない衝動をひたすら彼女に向けていた。
「今日だけは、ゆっくりなんて無理だから。」
そう宣言すると、彼女は観念したように俺の首に手を回す。今日の彼女はいちいち可愛い。
「里沙ちゃんが、可愛すぎるのがいけない。」
彼女を抱きながら、激しい行為のはずなのに、感じるのは何故か温もりで。
「…はぁっ、俊介…も、だめ…」
余裕なく俺の名前を呼ぶ彼女を、その温もりごと守りたいと強く思う。
きっと、もう本当に引き返せないのは俺の方だ。
「里沙…愛してる。」
俺は愛しい恋人の耳元で、馬鹿みたいに真剣に愛を囁いた。