臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 ブザーの音と同時にシャドーボクシングを始めた四人だが、二人の先生は折り畳み式の椅子に座り、一年生達の様子を見ながら時折話し合っていた。


 六ラウンドのシャドーボクシングが終わり、康平と白鳥は飯島に呼ばれた。

「今日から暫くの間、白鳥と高田は俺が見るからな。まずはグローブを付けろ!」

「今日は二ラウンド交替でミット打ちとシャドーをするんだが、まずはミット打ちのルールを教えるぞ! 高田、構えてろよ」


 言われた通りに構えた康平だったが、ミットを嵌めた飯島は、突然康平に左右の早い連打(ラッシュ)をしてきた。

 飯島が軽く打っているので、康平自身は痛みを感じなかったが、不意を突かれた彼はブロックをしながら固まってしまった。


「ハハハ、その状態だとスタンディングダウンと言って、立ったままカウントを取られるぞ! こういう時はなぁ、右後方へ一目散に逃げるんだよ。反復横飛びで右側だけにずーっと行く感じだ。うちの高校ではカニ歩きと言っているがな」

 飯島は話しながら見本を見せる。

「そして充分な距離がとれたら構え直せ! 途中で反撃しようなんて考えるなよ。とにかく離れて体勢を整えるんだ!」

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