臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「次は白鳥だ、いくぞ!」

 白鳥は飯島のラッシュを浴びながら、オボツカナイ足取りで右後方に逃げた。


「不恰好だっていいんだぞ! 目的は不利な状態から逃げる事なんだからな。……ただもう少し小刻みな感じでカニ歩きをしろ! それから横に逃げる場合はガードの幅を広げるんだ」

 飯島の話に康平が質問をした。

「先生、理由を教えて貰えませんか?」

「小刻みな足運びは足が揃わないようにする為だ! 両足が『気を付け』の姿勢みたいに揃ってると、軽いパンチでも倒されるからな。ガードを広げるのはフックを防ぐ為なんだよ! 横に動いた時に怖いのは、横殴りのフックだからな。分かったか? ……いや、これは分からなくても言われたようにしろ」


 二人にカニ歩きを数回繰り返させた後、更に飯島が話し始める。

「いいか、俺がさっきみたいにラッシュしてきた時はカニ歩きで逃げるんだぞ! まずは高田からミット打ちだ」


 次のラウンドからミット打ちが始まった。

 連日と殆ど変わらないミット打ちだが、康平が打ち終わった直後を狙って、飯島がラッシュを仕掛けてきた。

< 118 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop