臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「ゴメン康平、もう一回シュートお願い」

 亜樹は笑いもせず康平に言った。

 次に打ったシュートはボードからリングに当たり、亜樹のいる左側へボールが転がっていく。

 亜樹はボールを拾わないで頬に手を当てて考えている。


「門田さんの話を聞いた時、康平はもっとヒドイと思ってたのよね……」


「いくら俺だって、誰も邪魔しなけりゃボードを越えたりしねぇよ」


「そう……だったら康平は試合でも笑われないで済みそうよ」

「え……そうなの?」


 亜樹は足元にあるボールを拾っで左脇に抱えた。

「多分だからね。……でも練習が必要かも」


 その時社会人らしい人達が、バドミントンの道具を持って体育館に十人程入っていた。

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