臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「俺は用事があるから、お前らこの姿勢でいろ! ……女バスを見ててもいいぞ」

 康平達のポーズを確認した飯島は、女子バスケ部の方へ歩いていった。


 球技大会の事もあって康平は女子バスケ部を見ていたが、彼女達は交替で試合形式の練習をしていた。

 綾香と麗奈はコートから出たばかりのようで、タオルで汗を拭きながらドリンクを飲んでいる。

 麗奈が康平の視線に気付いたらしく、綾香の肩をトントンと指で叩き康平の方を指差す。綾香は一瞬だが右手を小刻みに振っていた。


 身動きの取れない体勢で、どう反応しようが迷っていた康平だった。

 バーン!

 体育館中にミットの音が響く。

 この空間にいた殆んどの者が、音の出た方向に視線を向ける。

 そこでは梅田と健太がミット打ちをしていた。


「白鳥、今の音は?」

 康平は小声で隣にいる白鳥に訊く。

「見てなかったの?」

 逆に白鳥から訊かれた康平は、女子バスケ部を見ていた事に少し罪悪感を感じていた。

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