臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「ストレートとアッパー(下から突き上げるパンチ)の中間ような左ボディーだったよ! ……有馬もそうだけど、健太のフォームが少し変わったよね」

 白鳥は話を続けたが、健太のフォームが変わってきた事は康平も気付いていた。

 健太はサウスポー構えで右半身が前に出ているスタイルだが、右手の位置が以前より前に出ている。

 シャドーボクシングをしているオーソドックス(右構え)の有馬は、前に出るハズの左肘を少し引き気味にし、逆に右手を左手と同じ位前へ出していた。シャドーを見た限りだが、彼の左ジャブは以前より力強い感じである。


 健太と有馬の練習を見た康平は、弛くなりかけていた空気椅子の角度を九十度近くに修正した。

 白鳥の頭の位置も心なしか少し下がったようだ。


 二人共空気椅子の角度を自らキツくしたせいか、健太達の練習を見る余裕はなくなり、冷や汗に近い汗が足元に滴り落ちていた。

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