臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「自分で……ですか?」

「そうだ! べつに限界を超えてまでやらせようとは思ってないから勘違いするなよ。……極端な話、ケンケンは右足で蹴る感覚を感じられれば体育館一往復でもいいし、空気椅子は左膝の角度を固める感覚が分かれば三十秒でもいいんだからな」

 康平と白鳥は、更に戸惑いの表情になった。


「ノルマを決めたくないんだよ! 例えばケンケンを体育館五十往復、空気椅子を時間で十分に決めたとすると、お前らだったらその日の練習はどうする?」

「ペース配分をすると思います」

 飯島の質問に康平が答える。


「だろ! ……俺だって補強にそんな練習メニューがあったらペース配分をするしな。だが練習の時は、補強の為にペース配分をして欲しくないんだよ」


 まだ理解していない康平逹に、飯島は話を続けた。

「お前らは部活で何の練習をしに来てる? 白鳥言ってみろ」

「……ボクシングです」

「そうだよな! 基本的に部活の時はなぁ、お前らのナケナシの体力はボクシングを身に付ける為だけに使い切らせたいんだよ。補強の為にシャドーやミットで手抜きをしたら本末転倒だからな」
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