臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
三日後の土曜日の午後、ボクシング場は康平達一年生が独占していた。
本来、一年生も土曜日の午前中に練習をするのだが、今月は集中的にコーチを受ける為、先輩達と練習時間をずらして行っていた。理由は、来月から始まるスパーリング(実戦練習)の為である。
康平と白鳥は、いつものように飯島のコーチを受けながら、頭を振りながら前に出る練習とダッキング(屈むような防御)からの返し技をメインに練習を進めていった。
練習も終わりに近づき、補強運動(筋トレ)に差し掛かった頃、康平が飯島に質問した。
「先生! ケンケンはボクシング場が狭いから、第二体育館でしなきゃいけないのは分かるんですけど、空気椅子は別にこっちでやってもいいんじゃないんですか? 場所も使わないですし」
康平を見て白鳥も頷いている。
飯島は腕を組んで考えていたが、ニヤリとしながら質問に答えた。
「いや、やっぱり第二体育館でやろう! これはお前達の為なんだよ」
話を聞いた二人は、不思議そうな顔をした。