臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 ボールはバックボードからリングに当たって大きく跳ね上がった。

 麗奈がリバウンドを取りにいく。亜樹は防御側に回っていて、麗奈と同時にジャンプした。二人は同じ位の身長の為か、ボールを掴む余裕がないようで、麗奈が辛うじてコートの右側へボールを弾く。

 そこには小柄な女子がいた。彼女はシュートを打とうとしたが、目の前にディフェンダーが立っていた。一度シュートを打つポーズをしてから、右側にいる長身の男へ小さくパスを出す。

 パスを貰った男は、バラけた相手のディフェンスをドリブルで切り込んでいき、リングから三メートル位離れた場所でジャンプシュートをした。

 ボールはボードに当たってからリングの中へ綺麗に入った。


「さっすが長瀬、運動神経は抜群だね!」

 麗奈が、シュートを決めた男へハイタッチをする。

 彼は長瀬和也(ながせかずや)といい、サッカー部員である。今年の新人戦は、フォワードとして一年からレギュラーとして試合に出る期待の新人だ。いかにもサッカー部員らしく、日焼けした濃い目の顔は精悍な印象なのだが、物静かで落ち着いた性格の男だ。百八十センチの長身なのもあってか、女子生徒には人気があった。

< 177 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop