臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「お前は宿題半分も終わってねぇから、どのみち行かなきゃなんねぇんだろうが」

 康平は突っ込みを入れながら、心の中で水筒持参を付き合ってくれる健太に感謝した。



 家に着いた康平は、麦茶のパックの位置を確認しようとしたが、どこにあるか分からなかった。

 冷蔵庫にある麦茶は結構な量だった。無理して全部飲んだ後、母親に訊いた。

「麦茶無くなったけど、どこにパックがあんの? 俺が作るからさ」

「あれぇ、結構あった筈なんだけど……パックは食器棚の左上の扉を開けるとあるわよ」

 パックは水に入れたままでも麦茶が出来るものだった。作りながら康平は安心した。

 水筒の場所は階段の下の物置に入っているのを知っていたので、康平は問題にせず確認しなかった。


 夜八時過ぎ、康平は亜樹に電話をした。

【明日亜樹は図書館へ行くの?】

【行くけど、康平は宿題終わったんじゃないの?】

【いや今後の為に勉強することは大事だから、明日も図書館へ行こうと思ってさ】

 康平は明日二百円を確実に貰う為、居間にいる母親へ聞こえるように声を大きくした。

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