臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 面倒なフリをして廊下に出た康平は、受話器のコードを最大限に伸ばし、できるだけ居間から離れた位置で受話器を耳に当てた。

【もしもし、電話代わったけど……】

【いきなりゴメンね! これと言って用事は無かったんだけど電話したんだ。……今大丈夫?】

【俺の方は大丈夫だよ! ……それはそうと初めて練習見たけど、みんなバスケ上手いんだね】

【みんな練習頑張ったもんね! 長瀬君みたいに最初から上手いのも中にはいたけど、……小谷さんや中澤君は私もビックリする程上達したんだよ】

【あの小柄で仲がいい二人だろ! 俺と同じでシュートを打つ役割みたいだけど、チームに貢献してるって感じだったよ】

【二人はねぇ、自分達のせいでケーキバイキングに行けなくなるのがイヤだからって、熱心に練習してたからね】

【……それとさぁ、練習と言ってもみんな楽しそうだったよな】

【……実はさぁ、康平の事が気になって電話したんだよね】

【え、俺の事?】

【……これは、もし私が康平と同じ立場だったらの話なんだけど、自分以外のメンバー全員が楽しそうに練習してるのを見ると寂しくなっちゃうなぁ……って思ったんだ】

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