臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
【何か怪しいけど……まぁいいわ。明日は綾香も来るようだし、君が来なくても私はいるよ】



 翌日の朝四時、康平は静かに階段の下の物置から水筒を持ち出す。

 急いで麦茶を作ろうとして蓋を開けた瞬間、康平は唖然とした。

 ずっと使っていなかった為か、中にカビが生えていたのだ。

 急いで中の掃除をする。水筒の中のカビは簡単にとれたが、水筒の飲み口は少し複雑な形をしていてなかなかとれそうにない。


「それはボールの中に水と漂白剤を入れて、一時間位漬けておけばとれるわよ」

 困っている康平に横から母親の声がした。康平は更に困った顔になった。


「昨日の様子が不自然だったから様子を見に来たのよ。ジュース代をあげているのに何で水筒を使うの?」

「あ、それは……その……」

 言葉に詰まった康平は、観念して正直にプレゼントの為ジュース代を貯める事を話した。


「これは母さんと康平の秘密ね。父さん達に見つかったらジュース代は出さないから、見付からないようにするのよ」

 母親は苦笑しながら言った。


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