臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「……梅田先生の前では言いにくいんだが、一番先生に怒られた奴がキャプテンをやらされるんだよ」
「えっ! それじゃあ今のままだと来年は僕がなってしまいますね。先生、これ以上怒られないようにするにはどうしたらいいんですか?」
「そんなのはテメェで考えろ」
うろたえて話す健太に、梅田は苦笑しながら答えた。
「ハハハ、先生が困ってるじゃねぇか。ただなぁ相沢もそうだけど、石山に比べたら怒られ度合いがまだまだ甘いんだよ。俺達が一年の今頃、石山は悲惨な位怒られてたんだよな」
笑いながら兵藤が話した。振られた石山は、気まずそうに口を開く。
「俺、今だから話しますけど……一年でスパーリングを始めた頃、あんまり怒られるんで毎日胃腸薬を持ち歩いていたんですよ」
「殴られるよりは怒られた方がよっぽどマシだろ」
梅田は困ったような顔をして言い返すが、飯島がフォローをした。
「そりゃ石山が悪いんだよ! あん時のお前は、打つ事しか考えていなくて防御がオザナリだったからな。あのままスパーを続けてたら、お前は二年になるまで壊されてたよ」