臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 ディフェンスの方式は、練習時間も少なかった理由から、ゾーンディフェンスを徹底する事になっていた。


 一通り作戦の説明が終わり、麗奈がもう一度全員に確認した。

「しつこいようだけど、ホントに全員が試合の半分ずつ出る……という事でいいんだよね?」

 康平を除いた全員が、それぞれ肯定する意思表示をする。

 昨日康平は、同じ話題で亜樹と一緒に麗奈をなだめていたが、一度も練習に参加していないのもあって、みんなの前では何も言わずに黙っていた。

 気付いた亜樹が康平に訊く。

「康平も大丈夫なんだよね?」

「……あぁ、俺も足を引っ張らないように頑張るよ」


 麗奈は小さく息を吐いた後、無理に笑顔を作った。

「今日は勝ち負けよりも楽しくいこうね」


「麗奈ぁ、そんな悲愴な顔しないでよぉ」

「俺達は楽しむつもりだけど、一応優勝も狙ってんだぜ」

 メンバーの中から二人が、からかい気味に麗奈へ話し掛けていた。

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