臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「話が変わるけど、三組の八番と九番の人はシュートを打てそうだったのに打たなかったよね。何でかなって不思議に思ってたんだよ」

「そんな事考えてたんだ! 練習の時もそうだったけど、メンバーの中で真面目なのは中澤君とコニちゃん(小谷)だけね。私は単に遠慮したんだと思うけど、亜樹はどう思う?」

 麗奈は涙を拭うポーズをした後に軽い口調で答える。

「チョット麗奈、いきなり私に振らないでよ。八番と九番て女バス以外の二人でしょ。……麗奈が言ったように遠慮したんじゃない?」

 亜樹も一瞬考えた後にサラッと答えた。


「何か向こうは大変そうだな」

 三組の方を見ながら長瀬が言った。

 球技大会のバスケには、リバウンドの他に特別なルールがあった。それは、一試合毎に全員が出場しなければならず、しかも最低五分はコートの中にいなければならない事だ。

 三組は前半に誰も交替していなかったので、後半誰を最初に出そうか話し合っていた。三人の女子バスケ部員達は、他人に指図するのが苦手らしく、困ったような顔をしながらコートに入る順番を指示していた。
< 215 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop