臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 長瀬は意外にしつこい。

「そんな曖昧な理由じゃないと思うね。俺達の出番になって、すぐにゾーンディフェンスから女バストリオへのマークに替えただろ。他の二人はノーマークだったじゃん。あの二人がシュートを打たないのは、確信してたんじゃねぇの?」


「何でそんなに理由が訊きたいの?」

 亜樹は、少し困ったような顔で長瀬に問い掛けた。

「俺と同じ考えだったら嬉しいと思ってさ」


「私は結果オーライだけど、あの二人がシュートを打たない理由があったんなら教えてほしいな」

 山根も興味が湧いたようだ。仕方が無いような顔をして亜樹は話し始める。

「あの女バス以外の二人は、シュートするのを避けていたんだけど。……ヒンシュクを買いたくないタイプだと思うの」


「シュートするのを避けているのは分かってたんだ」

「麗奈達と戦った十分間でも、シュートチャンスにパスしてたからね」

 山根に亜樹が答えた。

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