臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 まさか二百円を貰う為に図書館へ来たとは言うわけにもいかず、康平は少しだけ期待して健太をチラッと見る。


 健太は綾香の前だとまだ緊張するようで、残念ながらアテにならないようだ。

 今まで康平に茶々を入れると綾香の前でも自然体に戻れる感じなのだが、まだ今日は口が滑らかな状態ではない。


 康平が何て言おうか迷っていると、綾香が口を出した。

「可哀想だよ。きっと健太に付き合ってここに来たのよね」

「……そ、そうだよな、健太」

 咄嗟に相槌をしてしまった康平だったが、心の中で健太に謝罪した。

 康平に付き合ったのは健太の方である。綾香にとっては健太が情けない立場になってしまったのだ。


「まぁ、そういう事にしときますか。……時間が勿体ねぇし、トットと始めようぜ」

 健太は、妙に早い動作で勉強机に向かって歩いていった。

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