臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 長瀬は我が意を得たような表情で話し出す。

「俺さぁ、中学の時も一年の新人戦からフォワードとしてレギュラーになったんだ。練習試合の時、亜樹と同じ理由でシュートチャンスにパスを出してたんだよ。そしたらさぁ……」

「そしたら?」山根が相槌を打つ。

「ハーフタイムの時先輩に思い切りビンタされたよ。
『フォワードがシュートを外すのはミスだが、チャンスにシュートしないのは罪なんだよ! ゴール前で、先輩の顔色伺ってんじゃねぇぞ』
ってね。俺がシュートを打たない理由も分かってたんだろうな。……その先輩は今でも尊敬してるよ」


「……で、亜樹の答えは満足いく内容だったのかな?」

 山根は少しカラカウような顔で訊いた。

「まぁな! 自分と同じ考えを持ってる奴がいると嬉しくなるしね」


「またうちのクラス点入っちゃったよ」

 会話には参加せず、試合を見ていた村田が言った。

「麗奈の本領発揮ってとこね」


「それってどういう事?」

 亜樹の言葉に村田が質問した。

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