臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「今さっき麗奈がいた場所、……センターは彼女の本来のポジションだったのよ。これから、どんどんリバウンドを拾いにいくわよ」

 三組の攻撃は得点にならず、攻守が入れ替わった。

 控えメンバーは黙って様子を見ていた。麗奈は、相手方ゴールの近くで盛んに位置を変えている。ややコート中央にいる服部からパスを受けた中澤が、スリーポイントシュートを打った。


「麗奈は『オシクラ饅頭』みたいな事やってるね」

「アハハ、そう見えるかもね。……あれはスクリーンアウトと言って、リバウンドを拾う為のテクニックなんだ」

 亜樹は山根に笑って答える。

 中澤のシュートが左に大きく弾いた瞬間、麗奈は『オシクラ饅頭』からスルリと抜けて後ろに下がった。そして、ジャンプしながらボールを掴む。着地した彼女は、左側に走ってきた服部を見ながらゴールの右側へパスを出した。

 そこには野球部の山崎が走り込んでいた。彼のシュートで更に得点差が開く。


「前半の麗奈は、服部のポジションにいたからスクリーンアウトが出来なかったんだ」

 山根は麗奈の動きを見て納得していた。彼女は好奇心旺盛な性格のようだ。

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