臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「もうすぐ交替だから、真面目な話をするわよ。康平は敦子(山根)と一緒にディフェンスしたから少しは分かったと思うけど、ドリブルで抜かれなければいいよ。……それと変に下がらなくていいからね。向こうがブツカッテきたら、相手方のファウルになるんだからさ」
長瀬に言い返そうとした康平へ、亜樹がディフェンスのアドバイスをした。
「ハハハ、女王様のアドバイスは絶対だからな。それに、向こうからブツカッテきたら女子と接触出来るんだからさぁ、悦ばしい事だぜ。向こうの女バス部員も何気に可愛いしな」
「おや、長瀬はフェミニストじゃなかったの?」
長瀬の発言に、山根が意地悪な視線で突っ込む。だが、長瀬は平然として康平に訊く。
「康平、男だったらフツウ考えるよな」
「え、……ま、まぁな」
「と、とにかく後半はゾーンで守るからね。それと敦子と康平には、前半打てなかったシュートを打ってもらうわよ」
「アハハ、亜樹は可愛いわね。……あんたが服部に言った六十点主義を、私も実行するよ」
少し動揺している亜樹を、山根はカラカイながら言った。