臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「え、ジャイアントあず、……いや梓はバレーに出るんじゃなかったのかよ?」

 服部は慌てて言い直した。

「ちょっとぉ、……私の前でもだけど梓の前ではゼーッタイに禁句だからね! 彼女はああ見えて凄くデリケートなんだからさ。直接耳に入ったら落ち込んじゃうよ」

 村田は服部を睨み付けながら話す。

 村田と服部の話に出ている女子は、桐山梓(きりやまあずさ)といい、身長百八十一センチのバレー部員である。一年からレギュラーとして活躍する大型(!)新人だ。だが服部を含む一部の男子生徒からは、『ジャイアント梓』と陰で言われていた。


「その梓ってコはバスケに出るんだ?」

 亜樹が村田に確認する。

「そうね! 彼女は、球技大会でバレーとバスケの両方から誘われてたんだけど、お人好しだからどっちを断わるか直前まで迷ってたみたい。でも身体能力はハンパじゃないし、身長だって長瀬と同じ位あるからね」

「麗奈、少し試合を見に行かない?」

 村田の話を聞いた亜樹が、麗奈の顔を見て誘った。

< 231 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop