臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 教室に入ってきたのは、一組が初戦で対戦した三組の女子バスケ部の三人だった。五番のゼッケンをつけていた女の子が麗奈に言った。

「決勝へ出るのに審判するのは大変でしょ! 私達が代わってあげるよ」

「助かるよ。あんた達もそうだったけど六組も強敵だからね」


 六番のゼッケンだったコが康平に気付く。

「ん……確か、高田君だったよね?」

「え、何で俺を知ってんの?」

 康平は驚いた表情で訊いた。彼は第二体育館で練習する時が多い為、三人の顔を見ればバスケ部員なのは分かっているのだが、名前までは分かっていない。


「まさか自分はモテるって勘違いしてるんじゃないでしょうね? 梅ッチにあれだけ名指しで怒鳴られていたら、こっちは嫌でも名前を覚えちゃうんだよ」

「あぁ、なるほどね」

 麗奈はトゲのある説明をしたが、康平は納得したような顔で頷いていた。
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