臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 六組の健太もこの時間からコートに入った。

 一組からの攻撃で試合は再開した。

 新ポイントガードの長瀬がドリブルで進んでいく。彼は相手コートに入った瞬間、右サイドにいる康平へパスを出す。

 ノーマークだった康平は、一度体を沈めながらユックリと狙いを定めてシュートを放つ。

 ボールはリングの中へ吸い込まれていった。


「やるじゃん康平! 今日四本目だぜ」

 長瀬に言われた康平は、初戦で一本、二試合目で二本スリーポイントを決めていた。


「練習の時はあまり入らなかったのにね」

 後ろから康平の肩をポーンと叩いた亜樹が、小声で囁く。

「マ、マグレだよ!」

「四回もあるマグレって、あまり聞かないけどね。……誰かコーチが良かったのかな?」

「誰だか分からないけど、コーチが良かったんだろうな」

 嬉しそうに話す亜樹に、康平は照れ笑いをしながら言い返した。

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