臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 六組は急ぐ様子もなく、綾香を中心に攻めていく。


 綾香から健太にバウンドパスが出され、彼から更に赤の八番のゼッケンを着けた六組の女子にボールが渡った。

 彼女はシュートを放ったが、ボールはリングに当たって上へ跳ね上がる。

 亜樹は既に梓の内側にポジションを獲っており、スクリーンアウトで相手のジャンプを遮っていた。

 フリーになっていた村田がリバウンドを拾い、六組の攻撃は無得点に終わった。


 一組の攻撃に変わり、長瀬が自ら切り込むフェイントをしながら山根にパスを出す。

 山根は前の二試合と違って、慎重に狙いを定めてシュートを打つ。ボールはボードに当たってからリングの中へ入った。


「山根のシュートが入るなんて珍しいな」

「沢山シュートを外してんのに、しつこくパスをくれるチームメイトがいるからね」

 からかう長瀬に山根は平然と答えていた。

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