臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 最初の二ラウンドは、普段よりも離れた所から左ジャブを二発打つ。

 この練習は二週間前から行っていて、二人は踏み込みが良くなるように、右足の蹴りを意識して打っていた。

 康平と白鳥は二ラウンドずつ行ったが、二人共パンチは一発も届かず、快音の出ない静かな四ラウンドで終わる。

 冴えない表情の二人を見た飯島は、笑いながら言った。

「お前らそんなにガッカリするなよ! このラウンドは、わざと遠くから打たせているんだから、パンチが当たらなくてもいいんだよ。ただ、届かなくてもフォームは崩すなよ」


 次のラウンドが始まる直前、飯島が再び口を開く。

「次は距離を縮めて普段のミット打ちだ! しっかり当てろよー。まずは白鳥からだ」


 ラウンド開始のブザーが鳴った。白鳥がミットを打つラウンドになると、康平はシャドーボクシングをする事になっている。


 前のラウンドでやった踏み込んで打つ二発の左ジャブ。相手のジャブを右手でブロックしながら放つリターンジャブ。目隠しワンツーなど、習った技を確認しながら反復していく。

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