臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 相手の右ストレートを、左にダッキングして放つ左ボディーブロー。

 このパンチを打とうとした時、隣で練習している女子バスケ部の麗奈が康平の視界に入った。

 球技大会で、パスを避けてしまった時の悪夢がよみがえる。

(ヤバい、ヤバい)

 康平は首を左右に素早く振り、それを断ち切ろうとした。


 これに気付いた飯島が康平に言った。

「どうした高田? パンチを食らった時の練習なんかしなくていいんだぞ」


 女子バスケ部の方から、クスクスと笑い声が康平の耳に入る。

 ラウンド中は話してはいけないルールになっていたので、康平は恥ずかしさに耐えながら黙ってシャドーボクシングを続けた。


 二ラウンドが過ぎ、康平のミット打ちになった。

 飯島は左ミットを顔の高さで前に出し、右のミットは口の前で構えている。
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