臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 飯島がこの構えをした時は、最初の二ラウンドで練習した二発の左ジャブを打つ事になっている。

 まず飯島が前に出している左のミットに、一発目の左ジャブを踏み込んで当てる。

 そしてもう一度踏み込み、二発目の左ジャブを飯島が顔の前に置いている右のミットを目掛けて打つ。

 この二発のパンチは、一つの技として早いリズムで打つ事を強調されている。

 パンパン!

 ミット特有の乾いたような音が二回続けて鳴った。

 飯島は一瞬眉をしかめる。

 その表情に気付いた康平が不審な顔をした。そして以前もこのパンチを打った時に、飯島が同じような表情になった事を思い出す。


「いいから続けろ! 話は二ラウンドのミットが終わってからだ」

 飯島は、戸惑う康平に構わずミットで構える。

 その構えに反応した康平がパンチを打つ。

 打ち終わると、すぐに飯島が構えている。康平は考えている間がなくパンチを打ち込んでいった。

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