臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「まぁ、チョットした工夫でパンチや技の精度が変わってくるからな。……ところでもう一つ意識して欲しいのは、どうでもいい感覚で一発目を打つ事だ」

「ど、どうでもいい感覚ですか?」

 康平が聞き直して、白鳥と顔を見合わせた。白鳥も不思議そうな顔をしている。

「言い方を変えれば、相手に当たらなくてもいい感覚で打つって事だよ。……お前らに一つ訊きたいんだが、今やっている二発の左ジャブはどんな時に打つんだ?」

「相手との距離を詰めたい時です」

 白鳥が即答した。彼は夏休みの時に、大学生の山本からこの技の指導を受けていたので、康平よりも早く答えていた。

「お、答えが早いな。今白鳥が言った通り、お前らには距離を詰めさせる為に教えている。……ただ他にも使い道はあるんだがな」

 一呼吸した飯島は、再び二人に質問する。

「そこでだ。離れた所から距離を詰める為に二発の左ジャブを打っていくんだが、一発目のジャブはどうなる時が多いんだ?」

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