臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 バン!

 康平の左ボディーブローが飯島の左ミット当たった。そして、彼の顔面に左フックを放つ。

 飯島は右肘を後ろに高く上げ、右のミットを外側に向けて康平のパンチを受ける。

 バン!


 左ボディーブローから顔面への左フック。このコンビネーションを二十回繰り返した後、康平と白鳥が入れ替わった。

 白鳥のミット打ちも終わると飯島が言った。

「空気椅子の効果が少しは出ているようだなぁ。二人共フォームはいい感じだ。……ただ二発目の左フックはもっと早く打たせたいんだよな」

「はい」

 康平と白鳥は漠然と返事をした。すると飯島は悲しい顔をしている。

「……お前らそこは『どうしてですか?』って、訊かないのか?」


「え、スピードが足りないのは自覚しているんですが……」

 康平は答えた後、隣にいる白鳥の方を向いた。

「……僕もです」白鳥も頷いている。

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