臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「あ、いや……今日もお願いします!」

 康平は言葉を濁し、顔を見られないように深々と頭を下げて準備運動を始めた。

 この時の自分の顔がどの位絶望的になっているかは、想像すらしたくない気持ちの康平だった。


 練習が始まり、いつものようにシャドーボクシングを始める。

 ブロッキングやラリアットを避ける動きを混ぜながら、習ったパンチを繰り出す。

 一年生達は二日前から新しくパンチを習っていた。

 右ストレートのボディー打ちである。

 このパンチは、大体右ストレートと撃ち方は同じだが、先生はラリアットを避ける時のような低い姿勢で打つ事を、しきりに強調していた。尚、健太の場合は左ストレートである。


 シャドーボクシングは六ラウンドで終わった。今日は、連日のようにラリアット攻撃を避けるラウンドがなかった。

 梅田が言った。

「高田と片桐はリングへ上がれ! 高田は飯島先生、片桐は俺とミット打ちをするから急いで準備しろ。有馬と白鳥はサンドバッグ打ちだ!」

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