臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 彼の予想通り、真由は煎餅をバリバリ食べていた。テレビに夢中のようだ。

「ん……あんははひ、はんは用?」

 真由は煎餅を頬張り、テレビから視線を外さず、後ろにいる二人へ問い掛ける。


「実はさぁ、プレゼントの相場を聞きてぇんだよ」

 そう言った健太に目で合図され、康平は部屋を見渡した。

 窓の上には、「御用」と書かれた提灯が五つ並べてあり、テレビの横には、人気のゲームキャラクターの大きなぬいぐるみが置いてあった。


「ほんはほ、ひふんへはんはへははひほ」

「そんな事言わずに、ヒントだけでも教えたっていいじゃんか」

 真由は煎餅を食べ終わる前にもう一つ口に入れた為、康平には何を言ってるかサッパリわからなかったが、健太には通じているようで不思議と会話が成り立っていた。さすがは姉弟と言うべきであろうか。


 康平がもう一度見ると、後ろの壁際には「愛美須」と刺繍された紫の特攻服、本棚の上に戦車のプラモデルがあり、その横に「私の力作、ティーガーⅠ型」と書かれた手製の立て札まで付いていた。
< 35 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop