臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 電話越しに綾香の声が康平に聞こえた。

【あっれぇー、兄貴ったら受話器外したままじゃんか。……モシモシ康平、何で私の電話番号知ってるの?】


 康平は、たどたどしい口調で事情を説明した。

【……そう、亜樹の好きな物は、……口で説明するより一緒に買いに行く方がよさそうね。今午後三時だから六時に買いに行かない? 私がそっちに行ってもいいけど】

【それは綾香に悪いからこっちから行くよ。買い物に付き合ってくれるのは、ホント助かるよ。アリガトな】

【あ、チョット待って! うちの兄貴は変な事言ってなかった?】

【……いや、何も言ってなかったぜ。じゃぁ俺と健太で六時に駅前へ行くからさ。いいかな?】

【え、ウン私もその時間に行くからね】


 電話を終えた康平へ、健太が合掌した。

「ワリィ、六時から店の手伝いなんだよな。母ちゃんが町内会の会合に出るらしくてさぁ、出前しなきゃなんねぇんだよ」

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