臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
白鳥も同様に、健太の打った左ストレートでバランスを崩す。
「バカヤロー! 高田と片桐は軽く打てと言っただろうが。白鳥と有馬はお前らより十キロ軽いんだぞ!」
梅田の罵声が第二体育館に響いた。
「いや、軽く打ったつもりなんですけど。……このワンツーは魔法のようです。強く打てるし目隠しにもなるんですね」
健太が怒られたにも拘わらず、素直な感想を言った。その時梅田は、右手にミットを嵌め始めていた。
一年生達は、先生が何か新しい事を教えるかも知れないという期待をした。
スパーン!
「ラウンド中は喋るんじゃねぇ!」
梅田はどうやら、健太の頭を叩く為にミットを嵌めたようである。
ただ、梅田は一旦練習を中断して全員に説明を始めた。
「このワンツーにはタネがあるから、魔法ではなくてマジックと言った方がいいな。俺と飯島先生が目隠しワンツーと呼んでいる技だ。有馬、目隠しワンツーのワンを伸ばしたまま、そこで動きを止めていろ」