臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 左腕に衝撃を感じた康平は、すぐに右ストレートを放つ。 

 スパァーン!

 梅田が顔の前に構えていた左のミットから快音が響く。

 ブロッキングストレートと教えられた技である。

 梅田が言うには正式な名前ではなく、技を表現する為に、便宜上自分で勝手につけた名前という事だった。


 リターンジャブとブロッキングストレート。この二つの返し技を交互に五回ずつ繰り返す。

 その後梅田が言った。

「今からは不規則になるぞ」


 その途端、梅田が右手で構えていた。

 返し技をしようと待ち構えていた康平は、意表を突かれて動きが止まった。

 スパァーン!

 快音が体育館中に響き渡るのだが、今回は康平の頭からだった。


「今まで何やってきたんだ? 俺がこの構えをした時は、ジャブを打つんだよジャブを!」

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