臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
「ス、スイマセン」

 久々にミットで頭を叩かれた康平は、思わず謝ってしまった。


「ラウンド中は、声を出すんじゃねぇ!」

 梅田はもう一度康平の頭を叩く。

 スパァーン!



 この日は珍しく、女子バスケ部の方でも顧問の先生から叱責を受けていた。

「そこの二人! 笑ってないで練習に集中しなさい」

 二人が怒られた原因を作ったのが十中八九自分だと思った康平は、羞恥心が更に大きくなった。


 梅田は動揺している康平を知ってか知らずか、構わずミットでポーズを作る。

「……?」

 見た事がない構えに、康平は躊躇してしまった。

 梅田は右手を顔の前に置き、左手を頭の左上に置いているのだ。

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