臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)
 その直後に、梅田の左ジャブが康平の顔面に向かっていく。

 慌てた康平はリターンジャブではなく、左腕でブロックをして右ストレートを打ってしまった。

 つまり、ブロッキングストレートを打ってしまったのだ。

 幸い梅田は、左ジャブを受ける為に口の前へ右のミットを置いていたので、康平のパンチはそれに当たった。

「バカヤロー! 右と左も分からんのか?」


 梅田の罵声を浴びた康平は、またミットで叩かれると思い、肩をいからせて目を瞑った。

 ところが、なかなか頭に衝撃がこない。

 康平がそーっと目を開けた時、梅田は右のミットを振り上げていた。

「アホ、ラウンド中に目を瞑るんじゃねぇ!」


 スパァーン!

「ラウンド終了!」

 康平が叩かれると同時に健太の声があり、一ラウンド目が終わった。

< 90 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop