Closed memory
「ーー!」
殺気っ‼︎⁉︎
咄嗟に懐にある短刀に手を伸ばす。
意識を集中させて、周囲を探ってみるけど、自分のもの以外、誰の気配も感じなかった。
「(……気のせいか?でも、確かにあれは)」
速く脈打つ心臓の鼓動に、自然と汗が流れた。
喉が渇く。
俺は浅く息を吐くと、唾を飲み下した。
「ーー失礼します」
その時、盆を持った蘭丸が藤の間に入ってきた。
どうやら、空いている器を下げに来たらしい。
慣れた手つきで皿を重ね、蘭丸がついに【あの男】の前に辿り着く。
蘭丸も、気付いているのだろうか。
その男は、駄目だ。
他の奴らと、違い過ぎる。
くれぐれも、粗相なんてするんじゃねぇぞ。