Closed memory
「…綺麗」
空に向かって手をかざした蘭丸が言った。
差し出された手のひらに舞い落ちた雪は、あっという間に溶けてしまう。
綺麗だからこそ、脆く、儚い。
「……蘭丸」
お前も……雪みたいに消えてしまうんじゃないか。
そんな言葉が、喉の奥から飛び出そうになった。
「……この雪も人の生命も、俺は同じだと思う。綺麗だけど…いつまでも輝き続けるとは限らない。いつか必ず…終わりが来る」
「……」
俺は黙って、蘭丸の言葉に耳を傾けた。
相槌は要らない。
蘭丸は、俺の相槌を求めているわけじゃない。
自分の思いを、言葉にしているんだ。
そしてそれを俺に……。