Closed memory

「…綺麗」



空に向かって手をかざした蘭丸が言った。


差し出された手のひらに舞い落ちた雪は、あっという間に溶けてしまう。



綺麗だからこそ、脆く、儚い。



「……蘭丸」



お前も……雪みたいに消えてしまうんじゃないか。


そんな言葉が、喉の奥から飛び出そうになった。



「……この雪も人の生命も、俺は同じだと思う。綺麗だけど…いつまでも輝き続けるとは限らない。いつか必ず…終わりが来る」



「……」



俺は黙って、蘭丸の言葉に耳を傾けた。
相槌は要らない。


蘭丸は、俺の相槌を求めているわけじゃない。


自分の思いを、言葉にしているんだ。
そしてそれを俺に……。




< 4 / 79 >

この作品をシェア

pagetop